2012/04/25

3次元ディジタル作品の設計・制作

技術教育研究会の自主編成テキストとして,3次元ディジタル作品の設計・制作という技術科コンピュータ学習用の冊子を自費出版した。技教研からは,これまでにも自動化からはじめるコンピュータ学習や,ためしてわかる通信とネットワークなど,何冊かのコンピュータ学習の自主編成テキストが発刊されているが,自分は大学時代からこれらに深く関わってきた。


今回の「3次元ディジタル作品の設計・制作」は,これまでの2冊とは発想がだいぶ異なる。

先の2冊が,今回平成24年度から完全実施されるD情報に関する技術の内容を10年以上前から先取りして追求してきたものであるのに対して。今回のこのテキストは,コンピュータ学習から技術教育の核心を突くことを目指している。

技教研は,発足当時から製図学習を重視しており,長年製図テキストを中心に製図教育の実践を続けてきた。その根幹には,空間的に考える力を身に付けた生徒に設計の醍醐味を実感させ,その上に製作の授業を行うことが,技術教育の基本的なスタイルであるとの信念がある。

製図学習は,もうだいぶ前に製図領域の消滅とともに加工学習と一体化されてしまい,時間数の削減にともなって現場の技術科教師には,製図は最小限でよいといった認識が生まれてしまっている。しかし,最近文科省が「言語活動の充実」と唱えるようになって,製図学習で育まれる空間的に考える力,図に表す力が,技術教育で生徒が空間的に考え,アイディアを表現するために欠かせない能力であることは説明しやすくなった。

自分は,ロボコンのJr特許実践で図を駆使してアイディアを説明させる中で「アイディアの連鎖」に気付き,材料と加工の学習の中で,先輩の作品からアイディアをみつけ図で表し,自分なりの設計をえがき製作する「知的財産の学習サイクル」を用いた授業を実践してきた。現実の技術科の授業で,特にコンピュータを用いた学習の中で生徒に空間的に考える力を身に付けさせ,アイディアを実現させる技術教育を実現させることは,茨城に技術科教師としてに赴任して以来の課題である。
  • P3  はじめに
  • P4  立体をグリグリ動かそう
  • P6  等角図から立体を考えよう
  • P7  第三角法から立体を考えよう
  • P8 ★深めよう! 設計はコンピュータで【CAD】
  • P10 オリジナル立体の構想を立てよう
  • P11 オリジナル立体を制作しよう
  • P12 作り手の立場から著作権を考えよう
  • P14 ★深めよう! 社会を発展させる【知的財産】
  • P16 立体グリグリのデータでグリロボを動かそう
  • P18  ★深めよう! グリロボのモーター【ステッピングモーター】
  • P20 グリロボの型に金属を流し込んで鋳造しよう
  • P22 生産技術の世界
  • P24 グリロボで協同製作しよう
  • P25 CAD/CAM新聞を制作しよう
  • P27 おわりに

簡易3次元CADである「立体グリグリ」は,まだ3次元CADが一般的ではなかった1996年に自分がDOS版のフリーソフトとして発表したのが始まりだ。最新のWindows7でも快適に動くソフトとして今でもバージョンUPを繰り返している。
生徒が空間的に考え発想した立体を,オリジナル立体として作り上げさせる実践を,もう15年以上続けてきたことになる。その生徒たちのアイディアの積み上げが立体グリグリを大きく成長させた。テキスト表紙の立体は全て生徒が授業中に3~4時間程度でえがきあげたオリジナル立体だ。
今回これに,この数年開発が進められてきた簡易NC加工機「グリロボ」を用いた実践を加えて,CAD/CAM実習のテキストとした。

ディジタル作品の設計・制作というと,Webページの作成や動画編集などが扱われることが多い,しかし,それらは技術教育の核心をつく実践といえるだろうか。技術科の授業,技術教育は何を学ぶ教科であったのかを,コンピュータ学習の視点からあえて問いたい。
教育現場にいると,現実の技術の世界は見えにくいものだが,紙の図面がなくなり,3次元で立体を動かしながら設計をすることが当たり前になっていることに,現場の先生方にぜひ気付いてもらいたい。私たちは,現実社会と無関係な授業をしているわけではない。

1 件のコメント:

ろひ さんのコメント...

ワンフェスに出展しなさい